変身バックル 2012/8/22

 仮面ライダーの変身バックルです。上部の変身ボタンを押すと写真左のものから写真右に変身します。 右の写真では変身後のフィギュアが取り外されています。
 この変身バックルは実に3度目の修理になりますので、その経過を振り返ってみます。

最初のトラブル ほぼ2年前

 このおもちゃの原理は簡単で、変身ボタンを押すとバックル軸のフックが外れてスプリングで半回転し、 裏側の変身フィギュアが瞬時に現れるというものです。
 使っているうちに問題を起こしたのがこのフック部分です。わずかな突起でボタンの爪に引っかかる構造になっています。 材質はポリスチレン系と思われる比較的柔らかいものなので、フックのエッジが丸く磨耗しました。 最後には爪でフックを止めることが出来なくなってしまいました。

 左の写真がその時のフックの磨耗状態です。ツルツルになって、引っかかりが無くなってしまいました。
 このフックの反対側の軸にはスプリングが組み込まれており、バックルが半回転以上回転しないように軸に ストッパーが作り込まれています。

 このストッパーも同様に磨耗して、本来角ばっているべきものが丸くなってきており、 止まるべき位置で止まらずオーバーラン します。軸端の溝は、スプリングの片方のはじを挟み込むためのものです。
 これの対策には苦慮しました。磨耗部分を何かで肉盛りできれば簡単なのですが、面積が小さい割りに力がかかるので適材が 見出せません。
 窮余の策として、真鍮でバックルの軸部分を作ってみたらどうかと思いつきました。当時はまだロウ付けの経験もなく、どんなものが出来るか自信がなかったのですが。

真鍮で作った軸

オリジナルの軸

 左上の写真は今回3回目の修理で戻った状態のもので、最初の修理の時の記録ではありません。 順序が前後して紛らわしいのですが、 こんなものを作ったわけです。もちろん最初は片側の破損部も正常でした。
 オリジナルの軸は、たまたま2年間保存して持っていたものです。

あまり見てくれの良い出来ではありませんでしたが、内部に隠れてしまうものですし、とにかく正常動作するものを作り上げて返却しました。

2回目の修理 昨年9月

 昨年9月に変身ボタンの爪がダメになりました。真鍮とプラスチックがこすれ合っていれば、プラスチックが磨耗するのは当然の成り行きといえましょう。
 爪の部分のみ真鍮でこしらえ、インレイ状に埋め込んで接着しました。接着面積を増やすために、爪と直角にT字形に板を接合しています。
 前回の修理の折に、バックルを回転させるスプリングの調整に苦労したのですが、その後遺症でスプリングの長さが厳しくなっていました。それが今回とうとう短かすぎてスプリングの端を目的の場所に固定できなくなりました。
 似たようなスプリングを探してきて、目的の径になるように巻きなおして使おうとしたのですが、なかなか必要とするバネ力にならず苦労しました。結果的にはオリジナルより少し強めのもので落ち着きました。

今回3回目の修理

 既に見たように、バックル軸のスプリング装着側が折れました。薄板の円筒部分が変な具合にねじ切れていました。はっきりしませんが腐食が原因かもしれません。
 無理に力を掛けたとか、スプリングの力が大きすぎるとか別の要因があったのかもしれませんが、ロウ付け後のフラックス除去処理に手抜かりがあったことは確かです。ワイヤブラシでこすって水洗いした程度で済ましてしまい、酸洗いを怠りました。残留フラックスによる経年腐食の疑いが濃厚です。

 前回の製作方針は、真鍮の薄板(0.3mm)で作った筒を基本にするものでしたが、今回の修復では2mmの真鍮板を積層して必要とする形状を作りあげる方法に変えてみました。
 修復部を拡大すると左のようになります。機械で加工したようにはいきませんが、あまり破綻せずに形が出来上がっています。