モータブラシの修復
先端部だけ簡単に修理 2013/2/24

修理計画

 ブラシの形状はモータのメーカや機種などによりいろいろあるようですが、よく目にするのは 左図のようなものです。(不勉強でよく知りませんがマブチ製?)
 材質はりん青銅系と思われ、板厚はだいたい 0.15mm 程度です。

 このブラシの先端部はコミュテーターと常時摺動しているため、摩耗してついには先端が折れて無くなって しまいます。
 この状態でもしばらくは動いているようですが、最後にブラシがコミュテータと接触したりしなくなったりして 不具合となります。
 コミュテータの摩耗もありますし、本来この時点でモータの寿命と考えるべきなのかもしれません。

 しかしまだ使えるのではないかという貧乏根性で、これを 修理しようという計画です。ブラシ全体を 作り直すのは気が重い ので、 先端部だけ修復する構想を立てました。
 まず折れた先端部を取り除いて、ほぼ同じ大きさのりん青銅系の薄板をロウ付けします。

 ロウ付けしたりん青銅の薄板を長手方向に二分割します。 ハサミを使って切るつもりですが、うまくいくものかどうかわかりません。まあ後は擦ったり 叩いたりしてできるだけ平に 仕上げるとします。
 最初から二分割したものをロウ付けする方がきれいに仕上がるとは思うのですが、 何分小さなものですので技術的に自信がありません。

 最後に二分割した先端部をV字型に折り曲げて仕上げとします。
 まあこの折り曲げも難しそうですが、簡単な型を使ってなんとかなるのではないかと考えているのですが。
 以上がブラシ修復の計画です。

修理の実例

 さて実際のモータで修理してみます。
 不具合症状としては、回ったり回らなかったり不安定な状態になります。回らない時も軸を手で回して やると回 ることが 多いようです。
 カバーの一部を折り曲げてブラシケースを留めているので、 この爪を起こしてブラシケースを抜き出します。モータの回転方向の問題があるのでカバーと合いマークを打っておきます。

 正極のブラシが先に摩耗します。理由はあるとは思いますが、あいにく浅学で原理は分かりません。
 左のように惨憺たる状況になっているものが多いです。ブラシは単体で外せるようになっているので、ていねいに 外して、全体をきれいに清掃しておきます。

負極ブラシです。
 摺動部が摩耗して穴があいていますが、まだかろうじてブラシの形を保っています。正極より長持ちするようです。

正極ブラシです。
 摺動部分から先端が摩耗して無くなっています。(もちろん内部に破片は残っています。)
 この例でも、軸を手で回してやるとまだ回転しました。そこそこコミュテータと 接触できるようです。

 上で計画した方法と異なるのですが、最初に薄板を波形に曲げたものをロウ付けしたほうが加工が楽なことが分かりました。
 細く切ったものをV字型に曲げるのは実現不能でした。実際にやってみると、細長いだけでなく、ロウ材が流れて素材が不均一になり、取り扱いがきわめて困難でした。
 簡単な型を作って型押しすると、すこし大きめの薄板なら容易に波形に曲げられます。

 前図をハサミで切ったものですが、ヨレヨレでなんとも哀れな姿になってしまいました。
 ハサミで切るときにいろいろ無理な力がかかってしまう結果のようです。
 結果的には、この波形も二分割してからロウ付けした方が形を崩さずに済むように思えました。材料を押さえる方法を 工夫すれば、かなり細かいものでもロウ付けできそうです。

 見栄えは良くありませんが、曲りなりにも修復したブラシを装着したブラシケースです。
 負極のまだ形を保っていたブラシも先端を切り落として修復しておきました。
 耐久性がどうなっているのかは分かりませんが、とりあえずモータは快調に回るようになりました。

方法の改良

 型押し用の簡単な金型を鋼の端材で作ってみました。断面 3×8mm のものに、左の写真のような2山をヤスリを使って 整形しました。
 簡単形状なので難しいことはありませんが、何分小さいので削りすぎには注意が必要です。念のため焼入れ焼戻しも やっておきましたが、まあ必要はなかったとは思います。

 ものは試しでエポキシパテに上の金型を押し付けて雌型を形成してみました。こんなもので使い物になるか疑問 でしたが、 0.1mm の真鍮板では問題なく使用できました。
 この型を、たまたま手元にあったハトメ打ち機に取り付けてみたところ、結構使い勝手の良いプレス機になりました。


  0.1mm の真鍮板を必要な大きさに切り出し雌型の上にのせてプレスします。この写真のケースでは 4×4mm の 大きさのものを使用しています。



 プレスしたものは両サイドの不要部分を切り落として、左写真のようなピースを作成します。これを補修すべき ブラシの先端にロウ付けして二分割すれば目的達成です。

 板材の切断に新しい方法を編み出しました。ニッパーの刃を鋭く研ぎ上げてハサミ替わりに使用するのです。
 この方法によれば切断跡がねじれたりカールしたりせずに非常に具合が良い事が分かりました。
 上の写真のように、2山一体でロウ付けしたものを後から二分割しても何ら問題が生じません。先に修理計画で考えた 順番で実行可能です。