ある日の修理分担
2013/6/12

 当おもちゃの病院では、出来るだけ全員が均等に修理 を分担できるようにと考えて仕事を配分しています。なにしろ各ドクターはおもちゃの修理を楽しみに参加している訳ですから。
 そこで開院ごとに各ドクタの参加1日あたりの修理数を計算して参考にします。当日以前の過去1年間の修理個数を、その間におもちゃの病院に参加した日数で割った数値を使用します。
 参加一日あたりの修理個数を、数値の低いドクターから順番に一覧表示したものをスコア表と称しています。 おもちゃの修理を受け付けると、このスコア表の順で出席ドクターに修理を割り振ります。

 結果的に、スコアの低いドクターの修理の割り当てが増えて、スコアの高いドクターの割り当てが減る傾向が生じて、 ある程度の平準化が期待できるわけです。
 この処置を始めた当初には、スコアの最大格差は3倍ほどあったのですが、1年半ほどこの方式を実行した結果、格差は 1.5 をわずかに切る程度にまで改善されてきました。スコア格差が生じる原因はほかにもあるので、この方法で改善できるのはこの程度が限界だろうと考えています。
 ちなみに現在の平均スコア値は 1.23 となっており、ドクターがおもちゃの病院に参加すると、1日当たり 1.23個のおもちゃを修理している計算になっています。


ある日の修理分担

 さてある日のおもちゃの病院は6名のドクターが参加し、全部で14個の 修理を受け付けました。私はこの時はスコア表の2番目に位置していたものですから、表の3巡目で3個の修理が回ってきました。
 ところが他のドクターが自身の割り当てのおもちゃの一つを診断した結果、歯車が2個破損していて、 交換ギヤが無ければ修復不能な故障であることが分かりました。
 モジュールは 0.6 なのですが、単純な平歯車ではないので市販品での入手はまず無理です。 メーカから取り寄せる方法は可能かもしれませんが(注)、 たまたま私が修理した経験があるものですから、結局このおもちゃも私が引き受けることになり、都合4個の修理が 割り当てられました。
 あとで考えてみると、この修理を引き受けるとき自分の割り当てと交換すれば良かったのにと反省していますが、 思い至りませんでした。

(注)メーカに相談したら実費で歯車を送ってくれたケースもあるのですが、 いつもメーカーが特定できるわけではありませんし、また親切に対応してくれるかも疑問です。しかし同じようなムーブメントはいろいろなおもちゃで使っているわけですから、どこかで入手出来るには違いありません。ようは情報不足ですかね。

1.滑り台の留め具修理

 滑り台といっても屋内で使うごく小さなものです。その組立に使う留め具が破損して締め込みが出来なくなっています。 ポリプロピレン製のものらしいのですが、けっこう力が掛かるものなのでアルミで補強することにしました。 厚さ 1mm のアルミ材をロウ付けでリング状にし、ネジ部のバックアップとしました。 

 アルミリングの接着にはポリプロピレンも接着するという接着剤(スーパーX/セメダイン)を使用しました。


2.プラレール(東海道線)

 プラレールは大変完成されたおもちゃで、内部はスッキリとギヤボックスと電池ホルダーだけでできています。歴史の長さと、膨大な出荷量を考えれば当然かもしれませんが。
 ギヤボックスも大変洗練されていて、分解組立がいとも簡単にできるようになっています。何より止めネジが1本だけというのは大変スマートです。

 今回のプラレールは実は何度か修理に持ち込まれているものです。具合良く走らないというのがその理由なのですが、分解してみても原因らしいものが見つかりません。
 しかも、持ち込まれた時は確かにスピードが出ずに走り方がおかしいのですが、調査しているうちに直ってしまい、一度分解して組み立てると不具合が再現しないのです。今回もご多分に漏れず原因が分かりません。
 念のため、モータも分解してブラシの状態を調べましたが、汚れてはいましたが特に激しい損耗などは見られませんでした。整流子には溝が出来ていましたけれど。

 どうして良いのか分からないのですが、返却期日まではまだしばらく時間があるので、時々動かしてみて不具合の再現を待ちたいと思います。

3.救急車
(チョロQタイプのプルバック走行車)

 車体を床に押し付けてプルバックさせて離すと、ビックリするほど遠くまで走っていく車です。旧タカラのチョロQと同じタイプです。
 これも困ったトラブルです。確かに受け取った時は全く走らなかったのですが、調査しているうちにトラブルが消えてしまいました。
 ギヤボックスを分解調査しましたが異常は見受けられませんでしたし、再組み立てしてからはトラブルは再発していません。

 何か原因があるに違いないのですが、不具合が再発しないことには修理のしようがありません。とりあえずこのまま返却するつもりです。

 故障とは無関係なことですが、なぜわずかな距離をプルバックさせただけで遠くまで走っていくのか興味があったので、ギヤを調べてみました。

 結局ゼンマイの巻上げ時と走行時で、ギヤの構成を変化させている訳ですね。
 右図でいうと、#2,#3 のギヤは軸受けに逃げが設けられており、掛かる力の向きで動力を伝えたり、フリーになったりしています。
 巻上げ時には、タイヤ軸の1回転でゼンマイが 9/14≒0.64 回転巻上げられます。
 走行時にはゼンマイ1回転でタイヤ軸が 32/10*18/10*12/9=7.68 回転する計算になり、総合するとタイヤ1回転のプルバック距離に対してタイヤ 4.94 回転という計算になります。
 実際に走る距離はタイヤ4.94回転分などというものではなく、ゼンマイが巻き戻った後は #2,#3 の両歯車はフリーとなり車輪への拘束が無くなるので、あとは惰性で走ることが可能になります。実感としてはプルバック距離の少なくとも10倍以上は楽に走ります。


4.パトカー

 これが問題の破損したギヤです。
 車軸に取り付けられた 歯数26枚のギヤと、それと噛み合う 10枚のギヤが一部分で歯が破損しています。歯車の軸受ボスや本体が割れる故障は多いですが、歯が部分的に折損する例は(たまにありますが)あまり経験しない故障です。

 少々手間がかかりますが、ギヤの歯の正常な部分の型を取り、その型を使って破損した部分に仮の歯を創生します。 左の写真中央が歯を仮修復したものです。(仮修復と言っているのは、単に形を整えるだけで創生した歯に強度はありませんので、この歯車自体には実用性が無いからです。)

 この仮修復した原型を使用してシリコン型をとり、エポキシ系の樹脂をモールドしてコピーを作成しています。

 このパトカーでは電源線とスピーカへの配線が断線していたので、これを接続して修理完了です。幸いICには異常はなく、パトライトのパンタグラフも動作に異常はありませんでした。

パトカー後日談 6月25日

 油断大敵とはこのことで、修理したパトカーを返却しようとしてお客さんの前で試運転したところ音が出ません。結局返却を延期させていただくことにしましたが、修理の申込書の症状の欄を見ると「音が出たり出なかったりする」と書いてありました。肝心の不具合を見逃してしまったのです。
  車の中を診たときにスピーカのところで断線していたので、単純にああこれが原因だと判断し、最後にこの線を接続して音が出たので何の疑問も持ちませんでした。

 今回は不具合が継続したので調査は簡単でした。プリント基板からスピーカへの配線のハンダ付け部分で、配線がハンダの中で動く状態になっていました。従って状況によって音が出たり出なかったりしていたわけです。

 このおもちゃは結果的には3件のトラブルを抱えていたことになります。特に不安定な不具合には要注意です。つくづく返却直前に最終テストを入念にやる必要性があるなあと思い知らされた次第です。