オルゴールの修理 2013/8/30


      

 左のケースに収められたオルゴールが不具合です。ゼンマイを巻いても瞬時に巻き戻ってしまいます。 これは中の歯車が破損していて空回りするとこの現象になります。

 このタイプのオルゴールはカシメで組み立てられているので分解組み立てが面倒です。手間がかかりますが、ドリルでカシメの頭をとばして分解し、さらにカシメ部分にタップで組み付け用ネジ穴を切ってやります。

 蛇足ながら、最終組み立ての段階で音源(櫛歯)を取り付けるとき、シリンダーとの間にシックネスゲージで 0.15mm のスキマをあけて固定すると良い結果が得られました。


   
   

 オルゴールを分解してみると、やはり2個の歯車が破損していました。
 ひとつは歯数38 の平歯車の1枚の歯が欠損。もう一つは歯数6のピニオンギヤの2枚の歯が平歯車によって部分的に 削り取られていました。


 平歯車の方は例によって、破損した歯の部分に正常な歯のコピーを形成して、全体の複製を作成しました。
 ピニオンギヤの方は良い方法を思いつかないので、やむなく削り取られた部分にワックスを盛って目見当で歯を修復し、全体の複製を作成しました。部分的に削り取られているだけなので、ワックスの整形は容易でした。
 複製品を組み付けたのが左の写真ですが、問題なく回転しました。

 やれやれ完成だと思って、オルゴール全体を組み上げてゼンマイを軽く巻いてみました。快調に動いてくれるではありませんか。
 調子に乗ってゼンマイをしっかり巻き上げてテストしようとしたら、なにやらピッシという音がしたと思ったら動かなくなってしまいました。

 右の写真のように、風車駆動ギヤ側のシャフトが折れていました。
 エポキシ系の樹脂を注型材に使ったのですが、これが強度的に持たなかったようです。かと言って他に適当な注型材を持っているわけでもありませんから、金属のピンを挿入することにしました。

 軸中心にピンを挿入するのは、よい道具を持たない身としては至難のワザのひとつです。
 軸中心と思われるところに、ケガキ針で慎重に印をつけます。十分に拡大視して作業をします。その印に 0.6mm のドリルでセンター穴を軽くあけます。これはドリルをピンバイスにくわえて手作業でおこないます。その上で、ギヤの方をボール盤にチャックし、1mm のドリルをこれもリューターに取り付けて、双方を回転させながら穴をあけてみました。

 今回は幸運にも穴は目で見てほぼ中心に開いたようで、縫い針を適当に切ってシャフトとし、エポキシ系の接着剤で固定しました。
 以上で修理は完了し、危なげなく動作することを確認しました。この経験によって、エポキシ樹脂による注型品の強度に関してある程度の目安が出来た気がします。