空回りするギヤを固定する
2013/11/27

 ワンちゃんのぬいぐるみが歩かなくなりました。本来なら、トコトコしばらく前進したあと、突然後ずさりし ながらワンワン啼きます。そしてまた前進することを繰り返します。

 ぬいぐるみには2種類あって、中にワタなどの詰め物をして形を整えたものと、骨格があって単に皮を被せるように 外形を整えるものとがあります。
 我々の立場からいうと、ワタを詰めたものは後の整形処理が大変で、物によってはもとの形が再現できないことさえあり ます。その点、皮を被せたようなものは復元が容易といえますが、あちこちホットメルト接着剤で固定してあるため、少々荒療治も必要になります。

 今回のワンちゃんは皮の方でしたが、ムーブメントを露出させるのに完全に皮を剥ぎ取る必要があり、復元に いささか心もとなさを感じるほどでした。
 要所要所がホットメルト接着剤で固定してあるため、バリバリと剥がしながら皮をはずします。最後に骨格に相当する プラスチックの外皮を外すと、左のようなムーブメントが現れます。



 歩かない原因は、足を動かす軸のギヤが空回りしていました。正確に言うとギヤの位置が横にずれて歯車が噛み 合わない状態になっていました。

 前にギヤの空回り防止に、シャフトにキーをロー付けする対策を打ったことがありましたが、今回はシャフトが クランク曲げしてあるため、ギヤを抜くことが出来ません。プラスチックのギヤは熱に弱いですから当然ロー付けは不可です。

 いろいろ考えた末、今回はキー溝に相当するものとして、リューターのカッティングホイールを使って円弧状の溝を切ってみました。

 カッティングホイールは厚みが 0.8mm 、直径が22mm あり、中央での断面がおおよそ 0.8x0.5mm、 長さ 8mm の溝が切 れました。
 キー溝に太さ 0.8mm のピンを打ち込んでキーの代用としました。ピンといっても実際は縫い針を 利用したもので、針の先端から打ち込んで、はみ出した前後は削り落としました。
 このやり方は簡単で結構気に入っています。前回の時はキー溝を切る方法を思いつきませんでしたのでロー付けしましたが、熱が加わるのでシャフトなどは変色して見た目も悪くなり、あまり感心した方法ではなさそうです。適当な太さのピンを打ち込むと、軸方向もかなりしっかり固定されるような気がしてこれも good に思えます。

 ギヤの空回り対策は以上で終了ですが、ワンちゃんが間欠的に異なった動作をどうやって実現しているのか蛇足ながら チョット調べてみました。

 おそらく良く知られた仕掛けだろうとは思いますが、この場合には歯数40と39のギヤを同軸に配置し、これを歯数6の長いピニオンギヤで同時に 駆動している点がミソです。
 このようにすると、40枚ギヤが1回転するごとに39枚ギヤは40枚ギヤに対して歯1枚分先に進むことになります。
  このように回転につれて、39枚ギヤと40枚ギヤが相対的にゆっくりと回転することになり、ついに40枚ギヤに取り付けられたカムが39枚ギヤの溝にたどり着きます。39枚ギヤは スプリングで引っ張られているので、カムが溝に落ちるとそれに連動して可動ギヤの位置が軸方向へ移動します。
 それまで前進していたとすると、後進にギヤチェンジされ、さらに啼き笛の駆動軸が噛み合ってワンワンと啼く ことになります。またしばらくするとカムは溝から抜け出して、もとの前進モードに戻ります。

 誰が考え出したにしろ簡単で実に巧妙な仕掛けです。昨今はマイクロプロセッサによる制御が全盛で機構的には面白みがありませんが、こうした純メカニックな構造にはほれぼれします。日本の誇るからくり人形の技術に通ずるものがあるような気さえします。